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keit@ blog

仕神けいたの執筆ホニャラカ報告書。

迷子は迷子なりにがんばって迷子ってる。

猪突猛進っ!

文章書くのがものすごく鈍ってるのかもとからヘタヘタなのか。
練習もかねて、唐突に思い浮かんだものを短編にしてみました。

ある程度ルビ打ちできたら、本日エブリスタに掲載します。
落ちがないようで……練習不足が身に染みる(つд⊂)





「迷子」

「あのっ! お父さん、こちらに来てませんかっ!?」

 慌てた様子で迷子センターに駆け込んできたのは、カントリー系のファッションをした少女だった。
 高校生くらいだろうか。
 ふわふわとした格好とは逆に表情は焦燥している。

「えーと……お父さん、ですか?」

 思わずオウム返しした私に、少女はハッとした。

「あ……舞浜人志っていう人、こちらに来てないですか?」

 ここはショッピングモールにある迷子センター。
 家族とはぐれた子供が、不安を持ってこの場所を訪れる。
 ここでは、その不安を少しでも取り除き、家族のもとへかえすのが役割だ。

 平日はほとんど仕事がないこの部署も、土日ともなると急に忙しくなる。
 今も十人近くの子供が、お絵かきしたりDVDを見たりしつつ家族を待っている。

 そんな日曜日に訪れた、高校生くらいの少女。

 どうやら父親とはぐれたらしい。
 しかし、彼女くらいの年ともなると、わざわざこんなところに来なくとも、携帯電話で連絡を取り合えばいいような気もするが……。
 今時、持っていないのだろうか、携帯電話。

 私は、あまり事情を聞かないようにして、父親を捜しているのであれば――と、すぐ横の広まった場所を指す。

「迷子を捜しに来られた親御さんはあちらに何人かいらっしゃいますので、お父さんがいらっしゃるかご確認ください」

「あ、ありがとうございます!」

 言って、少女は駆け足で行ってしまった。

 お父さんがいらっしゃるといいな。

 そう思っていたが、数分後、シュン……とした顔で戻ってきた様子を見ると、どうやら父親はいなかったらしい。

「すみません、いなかったです」
「そうですか……」

 すぐ家族に会えなくてがっかりする子供を結構見てきたが、この少女ほど気落ちしているのは初めて見た。

「差し出がましいとは思いますが、けいた――」
 その先の言葉は出なかった。
 少女はどこかへ走り去ってしまったのだ。
 父親を捜しに行ってしまったか。

「携帯で連絡すれば早いのに……」


 十数分後。


 あの少女がまた来た。

「あの、こういう子供、来てないですか?」

 スマホで男の子の画像を見せてくれた。

 ――なんだ、スマホ持ってるじゃん。

 これで父親とは会えたが、今度は弟が迷子になってしまったということだろうか。

 少女のスマホには、小学校低学年くらいの男の子が彼女と一緒に写っている。

 明るい茶髪のショートカット。姉と一緒に映るのが恥ずかしいのか、照れてそっぽを向いている。

「それで、今日は黒い半袖パーカーとデニムの短パンをはいてて――」
「あ、はい……では、お名前を伺いますので」

「舞浜結衣羅です!」
「あー……えっと、すみません、あなたの方ではなくて――」

「あっ……! 人志、舞浜人志です!」

 彼女の声がセンター中に響いた。
 その名前、さっき聞いた気がする。

「あれ? そのお名前のお子さんなら先ほど来られましたよ」

 少女の声を聞いたもう一人の男性スタッフが、子供に見せるDVDを入れ替えながら言った。

「ちょっと待っててください、呼んできますから」

 言って、パーテーションの奥へと消えていく。

 しばらくして姿を見せたのは、少女――由衣羅の言った特徴の男の子だった。

「よう、お前も迷子になったのか?」

 あっけらかんとして由衣羅に手を振る少年。

「そんなわけないでしょっ! もうっ、勝手に歩き回らないでよ! お父さんっ!」

 ――えっ!? お父さん!?

 聞き間違いでなければ、少女は今、『お父さん』って言っていた。

 ――お父さんというのは子供の親であるわけで、子供が親になるには……

 私は精神的に衝撃を受けたらしい。思考がうまくまとまらない。

 そんなこととは関係なく、目の前では親子(?)のやりとりが続いていた。

「そう怒るな。ここもなかなか快適だぞ。菓子や茶も出してくれるし。童心にかえって遊ぶのもたまにはいいな」

 子供なのに、どこか達観した物言い、落ち着いた雰囲気。

「あのー……こちらの方でお間違いないですか?」

 少女に確認したが、答えたのは男の子の方だった。
「ああ、間違いなく私の家族だ。ありがとう、世話になった」

 ぺこりと頭を下げる。
 少女も、
「本当にすみません、ありがとうございます!」
 と、深々と何度も頭を下げて言った。


 ――もう、その姿であんまり歩き回らないでよ
 ――仕方ないだろう、魔女の呪いはそう簡単に解けぬからな、必要な材料を探していたのだよ

 ――ショッピングモールで揃うの……解呪の材料って……?


 その後の事は、あまり覚えていないが、いつものマニュアル通り、迷子の引き取り手続きをして、「お気をつけて」と言って終わった気がする。

 その手続きも、私の記憶が確かなら、書類を書いたのは男の子の方だった気がする。

 去りながら、怒る少女と、わっはっはと中年くさい笑いをする男の子を見送った。

 私は、書いてもらった書類をぽけーっと眺めた。

 そこには、引き取りの保護者氏名欄に「舞浜人志」と達筆で書かれていた。

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