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仕神けいたの執筆ホニャラカ報告書。

  つぶやきまくり

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一つ前の記事の続き……というか、もう一つのネタ。

 運の良いことに、視線はノートに落としたままで、誰も鏡子がうたた寝していたことに気づいていないようだ。カリカリとペンを動かす音が教室を支配している。
 教師も黒板に数式を書きながら説明を続けていた。
「この問題はこの公式の応用で・・・」
 試験に出題されると言われた公式をみな必死で書き写しているなか、鏡子もまたペンを動かそうとするが、どうにも動きが鈍い。
 先ほどの悲鳴が頭から離れなかった。

――もし、”死ぬ”ことを体験できるなら、試してみるか?

 ロンドの声が鏡子の頭の中に響いた。

――そんなこと、できるわけがない

 常識で考えれば当然だ。死を体験するなど――あの青年は狂ってる。変な夢でも見たのだろう、忘れてしまえばそれで終わりなのだ。
 鏡子は、一度止めたペンを再び走らせる。
 昼過ぎの出来事など忘れるように勉強に集中した
「亜須奈、この問題を前で解いてくれ」
「あ、はいっ」
 懸命に問題を解いているとき、自分の名前を呼ばれ、鏡子は、何事もなかったように席を立った。
 その後の授業も、昼休みのことなど忘れてしまったように勉強に集中した。



 その帰り道。鏡子はいつものように通学路を通り、神社の前を通り過ぎようとして、ふと足を止めた。朱塗りの鳥居の下に、青い色が視界に入ったからだ。
「あんた・・・まだいたの? いいかげん・・・」
 どこかへ行ってしまえ、と言いたかったが、なぜか口からは赤いものが飛び出した。
 ロンドは、数メートル離れたところにいる。そして、自分は、
「っ血・・・? ど・・・して・・・・・・」
 赤く染まった手を見、胸元を見ると、銀色に光る刃が鏡子の身体を貫いていた。
 刃は、ロンドの手まで続いている。
「一度でも、その思いを持てば受け入れたものとみなす。お前は思ってしまったんだ・・・・・・死んだらどうなる? と」
 俯き加減に喋っていたロンドが、ゆっくりと頭を持ち上げると同時に、鏡子の意識は遠のいていった。

 時間がどのくらい経ったかわからない。
「きゃぁあぁあぁああああ」
 女性の悲鳴で目が覚めた。
「鏡子ぉ――――!」
 血の海に倒れる鏡子に駆け寄ったのは、他でもない自分の母だった。
 ロンドは警察に取り押さえられ、鏡子自身も青いビニールシートをかけられた。野次馬が騒ぎ、警察が動き、そして鏡子は遺体となった自分の身体が運ばれるのをじっと見ていた。
「・・・これから、どうなるの?」
 セウスに訊ねるが、セウスもわからない、といった表情で肩をすくめる。
「やっぱ、葬式・・・やるのかな?」
 ポソリとつぶやいた言葉は、誰にもわからなかった。
 翌日、鏡子は白木で作られた棺に丁寧に寝かされ、遺品としてお気に入りの本、好きなお菓子、花が添えられた。
 親戚の葬式のときは、ずいぶんと長いものだとあくびを殺していたものだったが、いざ自分の事となるとほんの一瞬のように感じられた。
 火葬場まで運ばれ、灰と骨になった自分が小さな壷の中に納められていく。肉が高温で灰にされ、その匂いは暑さと混ざりむせ返るほどだ。
 全てが終わり、黒服の集団は、それぞれに散っていった。
 その中の一人、鏡子の母は惚けた顔で父と帰宅し、フラつく足取りで二階へあがる。自室へは戻らず、私の部屋へ吸い込まれるように入ると、勉強机をそっと撫でた。
「きょう・・・こ」
 母がつぶやき、後ろで姿の見えない鏡子が返事をするが、伝わるはずがなかった。
「母さん、あんたがいなくなって寂しいよ・・・」
 初めて聞いた、母の寂しげな一言。いつもは、嫌味なくらい怒ったり褒めたりしてはいたが、弱音だけは聞いたことがなかった。
 その母が、今、鏡子がいなくなったことで寂しいと言う。
 机を撫で、本棚を眺め、ベッドに座り母は泣いた。
「母さん・・・」
「わかるか? これが”阿須奈鏡子が死ぬ”ということなんだ」
 セウスが自分と同じく母を見つめて言った。
「確かに自分ひとりが死ねば後は楽になるかもしれない。でも、残された皆はお前が楽になった分苦しみや悲しみを背負うことになるんだ」
「私・・・」
 鏡子もまた、涙を流していた。
 セウスとロンドは訊ねた
「鏡子、君は君自身の死を望んでいるか?」
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